感情レヴュー

中沢忠之、『文学+』を刊行する「凡庸の会」同人

2005-01-01から1年間の記事一覧

「終わり」に抗するまでもなく

自民党の片山さつき衆院議員が前原誠司民主党党首に対し「こいつ」発言を繰り出し、さっそくそれを受けて民主党の国会対策委員長が「しつけができていない小泉チルドレン」と呼んで、「彼らの座る席はチャイルドシートだ」と自信満々に揶揄したとのこと。 こ…

安吾戦争小説論(4)

4.二つの戦争 ここ迄で私は、「白痴」をはじめ、「外套と青空」、「戦争と一人の女」、「続戦争と一人の女」、「私は海を抱きしめてゐたい」、「櫻の森の満開の下」を安吾の戦争小説という括りのもとに論じてきた。そこではくり返し戦争が想起された。戦争…

在庫管理は適正に?

ところで私はここ3年間主にスーパーの青果(まあ八百屋ですね)でアルバイトをして日銭を稼いでいる。 朝一番、納入された野菜や果物たちを荷降ろしし、前日から店頭に出されたままの商品の中から古くなった商品を区分けし厨房に下げる。開店してからは、新…

安吾戦争小説論(3)

3.二つの枠 「白痴」と同じ時期に発表された「外套と青空」(46年7月)は、友人の妻・キミ子に恋した男・太平と、夫の友人・太平に恋した女・キミ子との二転三転する恋愛関係を主線に物語が展開していく。 「白痴」とはまったく異なった内容をもつ体裁にも…

安吾戦争小説論(2)

2.二つの顔 終戦久しい現在では驚くべきことだけれど、「人間と豚と犬と鶏と家鴨」が「まったく、住む建物も各々の食物も殆ど」差別なく各自の生を営んでいるという、そんな家屋の一室を間借りしている伊沢なる二十七の男に焦点化して、戦時下にある彼と白…

お前はモナーか、のまネコか?(3)

いわゆる「のまネコ問題」は、当該企業が商標権申請の取り下げを告知したようです。あわせて、(C)表記も商品に付けずに今後は販売することになるとのこと。 途中、2ちゃんねる管理人のひろゆき氏による、浜崎あゆみのロゴだかトレードマークに似せた「のま…

安吾戦争小説論(1)

2005年、今年はかの坂口安吾師匠の死後50周年記念なのですよ。安吾と言えば、「堕落論」とか「日本文化私観」とか、歯切れよくずばずば物事を裁断していく語り口が魅力なエッセイがとりわけ言及されるものだけれど、50周年を記念して彼の小説たちについてい…

お前はモナーか、のまネコか?(2)

9/21日記に、「企業と法制外的な動きとの関係が問われている、のまネコ(C)問題」と適当に書きましたが、今回の件での明確な一つの具体策を提案されているサイトを発見。「「のまネコ騒動」についての違和感」http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2005/0…

お前はモナーか、のまネコか?

いわゆるのまネコ問題。先ずは三者からの見解を確認。 ●企業に批判的な見解(ウェブを探せば色んな見解に出会えますが、ひとまずこの二サイトに代表していただきました。) 「えっ!? AVEXが2chキャラを盗用!!?5分で解る「のまネコ」問題」 http://jns.ixla.…

「世界の終わり」と寝ること――9月10日の補完

私は、先日の西島大介論で、「世界の終わり」と恋愛の関係についてこのように述べた。西島大介さんは、「「世界の終わり」とか終末観だの閉塞感を、作品のテーマに一貫して採用している」けれど、一読すれば、必ずしも「「世界の終わり」に拘っているわけで…

西島大介のプー

革命やら戦争やら、もう何をしたって世界が変わることはない…。「世界の終わり」とか終末観だの閉塞感を、作品のテーマに一貫して採用しているマンガ家がいる。長編デヴュー作『凹村戦争』、『世界の終わりの魔法使い』、近作『ディエンビエンフー』の作者、…

今日的ギャグの傾向と対策――8月30日の復習(1)

先日は、ギャグマンガを題材にしてギャグに対する感度を問題にしました。それは歴史的に規定されるものだけれど、しりあがり寿というマンガ家を通して必ずしもそうとは言えない、作家独特の感度も歴史(ギャグマンガ史)上キラ星のように点在しているという…

ギャグ多重態――現代ギャグマンガ/しりあがり寿論

弥次喜多in DEEP (1) (ビームコミックス)作者: しりあがり寿出版社/メーカー: エンターブレイン発売日: 2000/06メディア: コミック購入: 1人 クリック: 18回この商品を含むブログ (30件) を見る ジャンルはギャグマンガなのに、人知れず哀しく、しんみりした…

これはだれの政治か?

「『グランド・フィナーレ』を少女愛抜きで!」。中島一夫さんは、阿部和重さんの『グランド・フィナーレ』をめぐる評価に、際立って症候的な特徴を見出している(「新潮」7月号)。『グランド・フィナーレ』は、冴えない男の少女愛・ロリコンを核となるテー…

鹿島田真希の苛立ち、長崎の苛立ち

今回ここで書くことは、鹿島田真希さんの小品「女小説家」(「群像」5月号)と「俗悪なホテル」(「早稲田文学」5月号)を読んだ印象の諸々。ただし『俗悪なホテル』はこれを100倍くらい増量して展開すると面白そうだけど、これだけだと余りぱっとしないとい…

『現代小説のレッスン』は、現代小説のレッスンたりうるか?

現代小説のレッスン (講談社現代新書)作者: 石川忠司出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/06/17メディア: 新書購入: 3人 クリック: 37回この商品を含むブログ (70件) を見る 石川忠司さんの『現代小説のレッスン』。このテキストは、文学の「エンタテイメン…

キレる語り、アミービック・ナラティヴ

註:金原ひとみさん=キレる語り説は、雑誌「an・an」における嵐の二宮和也さんの的確な指摘による。 AMEBIC作者: 金原ひとみ出版社/メーカー: 集英社発売日: 2005/07/06メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (94件) を見る 前作『アッシ…

ゲンバク小説

六〇〇〇度の愛作者: 鹿島田真希出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/06メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (49件) を見る「自分の過去のいかに劇的な瞬間を語る時にも、違和感は拭えない。かつて自分の過去を無秩序と見なし、それを秩序…

袋のなかの失楽――「箱男」ならぬ「袋族」2

さよならアメリカ作者: 樋口直哉出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/07メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (42件) を見る 樋口直哉さんの『さよならアメリカ』は、頭から袋を被って生活する男の話。箱男たちがそうだったように、袋族の男…

「箱男」ならぬ「袋族」

さよならアメリカ作者: 樋口直哉出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/07メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (42件) を見る 今年の群像新人文学賞を勝ち取った樋口直哉さんの『さよならアメリカ』(「群像」05年6月号)。袋を被って生活す…

怒り+笑い+哀しみ=BR弾

バトル・ロワイアル [DVD]出版社/メーカー: 東映ビデオ発売日: 2001/09/21メディア: DVD購入: 1人 クリック: 88回この商品を含むブログ (127件) を見る 最初の滑り出しはあの『漂流教室』かそれとも『ドラゴンヘッド』のようないい加減さで、とある中学三年…

「Jホラーシアター」VS「ホラー番長」

予言 プレミアム・エディション [DVD]出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント発売日: 2005/04/01メディア: DVD購入: 2人 クリック: 43回この商品を含むブログ (75件) を見る 『予言』『感染』(以上、一瀬隆重さんプロデュース「Jホラーシアター」…

「深呼吸の必要」が過呼吸にならないために

深呼吸の必要 [DVD]出版社/メーカー: バンダイビジュアル発売日: 2005/01/28メディア: DVD購入: 1人 クリック: 81回この商品を含むブログ (132件) を見る 篠原哲雄さんの『深呼吸の必要』。景色よし役者よしテーマよしの三拍子揃った映画作品。それなのに感…