感情レヴュー

中沢忠之、『文学+』を刊行する「凡庸の会」同人

2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧

方法としての竹内好

日本とアジア (ちくま学芸文庫)作者: 竹内好出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1993/11/01メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 11回この商品を含むブログ (27件) を見る竹内好とは、戦時中から中国文学を専門とし、論壇と文壇に幅広く関与した評論家として知…

窓から窓へ――『トウキョウソナタ』

東京に住むある家族の離散および崩壊と再生の物語。誰しもが認める通り話の大筋をまとめるとこうなるが、それに触れる前に、まずは窓に注目しておかなければならない。『トウキョウソナタ』は窓に始まり、窓に終わる映画だからだ。 注意すべきは、この映画に…

分析と総合――モダニズム以降の表現の可能性(3)

ファンにとっては言わずと知れたことだが、刑事・探偵ものドラマには画期となった作品が二つある。一つは、村川透ほか演出・松田優作主演の『探偵物語』(1979−80)。もう一つは堤幸彦演出・中谷美紀主演の『ケイゾク』(1999)。 ふり返ると、1970年代から8…

リアリズムの再考

前回のエントリーを読み直し、文学が好きだとか嫌いだとか、趣味判断とか感情を強調しているところが散見されて、われながらなんとも気色悪い。そんなこというまでもないことなのだが。原理主義のタチの悪さってこんな感じだろうなと激しく猛省。 ただ、分析…

前回の注改

最初に、前回のエントリーの訂正を。 東氏の「自然主義的リアリズム」観を、「相対的に可能性を省みられない(まあお役目御免的な)様式」と定義したことに関して、暴力的だというご批判を受けました。確かにそうですね。彼は現代社会に対応した様式を「ゲー…

良質なリアリズム――柴崎友香の私小説

リアリズムというものが、自分を取り巻く世界と向き合い、それを正確にとらえようとする志向性のことであるとすれば、このような志向性に対する不信感はいつの世にもあるものである。 こと日本では、リアリズムを継承したとされる私小説からして、実際はリア…