感情レヴュー

中沢忠之、『文学+』を刊行する「凡庸の会」同人

文学フリマに参加する同人誌『Children Vol.05』に「アプレゲールのリアリズム」を寄稿しました。

『Children Vol.05』に論文を寄稿しました(詳しくはhttp://d.hatena.ne.jp/natume_yo/20090430http://d.hatena.ne.jp/inhero/20090510)。タイトルは「アプレゲールのリアリズム」。1945年から50年代の戦後美術史についてのものです。博士論文の一部を「リアリズム」というテーマのもとに編集し直し、若干加筆しました。65枚。立ち読みできない程度に読みごたえはあると思いますよ。
確か以前椹木野衣氏が言っていたことですが(『日本・現代・美術』)、戦後美術史は最初の10年間ほどはほとんど記述された例がなく白紙状態だということを、「悪い場所」としての戦後日本を説明するさいに言及していましたよね。この論文では全方向的にかなり煮詰めてその時期の美術史を論じています。
「みずゑ」とか当時の美術雑誌を図書館にこもって読み込んだ、汗と涙の結晶というほどでもないけれど、そこそこ楽しめるものに仕上がっていると思います。当時の文学史との併走関係も少し分かるようにまとめたつもりです。この時期の美術史は「良い」「悪い」関係なく十分面白いし、それにその周辺では花田清輝小林秀雄といった文学関係の批評家たちが頑張っていて、じつは文学の側から橋を架けた方が美術史も見えやすくなったりするんですよね。
戦争の反省や社会主義リアリズムの影響によって、戦前のモダニズムの(「悪い場所」的)成果が抑圧される傾向が(戦後5年間ほどは)確かにあるけれど、ジャンルの垣根があまりなかったり、社会や政治との関係を強く意識したり、アプレゲールならではの混沌ぶりが魅力的な時期でもありました。
『Children』の若い参加者たちの、小説に対する思い入れに深く賛同し、このたび寄稿させていただいた次第です。ぜひお買い求めください。でもtwitter本の方が面白そうじゃないか! 当日は時間があけば遊びに行きたいなあ。