著作権保護期間延長の動きについて、文学は何をしてるの?
以下、参考テキスト。
*「著作権問題を考える創作者団体協議会」が出した「共同声明」
http://www.mpaj.or.jp/topics/2006_18.html
*著作権保護期間延長の動きについて、参考になるテキストをまとめたサイト
http://d.hatena.ne.jp/copyright/20060917/p1
(上記「共同声明」についてもこのサイトを通して知りました。他にも、参考になるところが多いです。この場を借りて感謝。)
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以下、ちょっとした感想。
もちろん私は、延長の動きに反対です。そもそも、そのような権利をもたざる者として心情的に反対したい、という面もありますが、端的に言って、反対側の主張のほうが理論的だからです。それに何より、反対側は、権利主張側の権利を認めつつそれとの妥協点を模索しているわけですが、権利主張側は、自分たちの権利をいかに引き伸ばすかしか考えていない*1。
反対側からの議論はいくつかにわたり、すでに出尽くしているので、僕がここで何か新しいことを付け加えることはないのだけれど、この動きに日本文藝家協会が賛同しているところが、どうも個人的に腑に落ちなくていまレヴューを書いている次第。他の団体はいいとしても、あの作家たちが!? といった具合。しかも、同協会のサイトを調べたら、けっこう以前から70年延長の要求をしていたことを知りました。1997年に、理事長・江藤淳名義にて文化庁に対する要望書を送付している。http://www.bungeika.or.jp/19970605.htm
同協会の会員の中には、そのキャリアに照らしてこのような権利主張をとうていしない(と信じる)作家や批評家も数多くいる。少なくとも、会員の何割かは、権利主張側が現在展開しているようなロジックなど受け入れがたいのではないか。あるいは、協会のやっていることは、わたしらには関係ないってことなのかな。文学的には、何か考えているふりをしたり、社会に批判的になってみせたりするけれど、経済的な取り分に関しては、取れるもんはみんなとる、子孫の分までとる、って感じなんでしょうかね*2。個人個人の作家に、この件についての意見を聞きたいのだけれど、どこかの媒体が特集を組んでくれないのだろうか? 「デジタルメディア時代」における著作権問題とか漢字表記問題とか、かつては個々人の作家を巻き込んで話題になったトピックがいくつかあるはずだけれど、この件については誰も語ろうとしていないんじゃないか。語ってる?
僕個人の思いだけれど、作家たるもの、こういう社会的問題(しかも自分たちの表現の根底にかかわること)には敏感かついち早くアクセスするものであり、とくに、無意味・非論理な権利主張、制度の横行には批判的な態度を示すのが彼らだと思っていた。おそらく、こういう作家イメージも、かつての作家イメージ、作品のためなら酒におぼれて貧乏も辞さずというようなイメージとともにもう存在しない、というかそもそも存在していなかった、という落ちがつくのかもしれない。みんな自分が好きなんだし、人のことかまっていられるような時代でもないってことだ。
まあ延長されたらされたで、ぜんぜんかまわないんだけれども。もともと金になりそうな権利にかかわれるような人間ではないし、我々この先50年も70年も生きる人間じゃないわけだしね。どうせ延長するなら私的所有権として永久権利くらいにした方がそれなりに論理的な主張が展開できるんじゃないでしょうか。