感情レヴュー

中沢忠之、『文学+』を刊行する「凡庸の会」同人

柴崎友香論を寄稿

きたる6月12日の文学フリマで販売される文芸同人誌『S.I.』(http://d.hatena.ne.jp/leftside_3/20110609)にエッセイを寄稿しました(1万7千字超)。タイトルは「ファミリーリセンブランスとしての私 柴崎友香論」です。
議論の展開は、まず文学史の背景として、内向の世代から柴崎友香長嶋有へという、自己表現と世界認識の変化の流れを解説。方法論としては、ジェラール・ジュネットを嚆矢とする従来の叙述/描写論とは全く異なった切り口を用意しました。
柴崎友香の特異な叙述/描写は、一見すると従来の方法論で分析できてしまうようなところがあるものの、そこには収まりきらない特異な魅力があるわけで、そうである以上、それに合わせて方法論もバージョン・アップする必要があったということです。
「ファミリーリセンブランス」というのはもちろんあの「ファミリーリセンブランス」です!
長嶋有は、本稿では柴崎のサブ的なポジションという位置付けにとどめましたが、本当は単体で論じたい作家です。たとえばSNSソーシャルゲームに関心のある人は面白く読めるのではないでしょうか。長嶋は、「気分が主体の人・志賀直哉」(柄谷行人)のある意味正しい後継者「趣味が主体の人」なんです。もちろん柴崎友香もすばらしく趣味の人です。
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柴崎作品で今回注目した作品は、最近作の『主題歌』『星のしるし』『ドリーマーズ』『寝ても覚めても』『ビリジアン』の5作。僕はこの3月に繰り返しこれらの作品を読んでいました。それともう一人、ni_kaのAR詩(http://yaplog.jp/tipotipo/)も何度も読みました。そしてtwitterでいくつかコメントもしました。言葉の遅滞さ無力さにもどかしさを感じながら、いまから思えば、浮遊し分散する言葉(わたし)たちのおかげで僕の心は折れずにいられたのだと思います。