感情レヴュー

中沢忠之、『文学+』を刊行する「凡庸の会」同人

物語の連鎖、ひたすら連鎖

(例1)作家間、固有名間のオマージュ的連鎖。

マネ『バルコニー』1868

マティス『コリウールのフランス窓』1914

ザオ・ウーキー『アンリ・マティスに捧ぐ』1986
この連鎖においては、マスターピースを軸にした美術史の豊穣な物語が語られるだろう。具象と抽象の間でゆれながら作家の固有名だけはゆるぎないものとしてここにはある。
むろんここに、たとえば藤島武二の『黄浦江』(1938−『幸ある朝』1908)の「窓」を繋げて、もう一つの物語を語り起こすことも可能だ。美術史をさらに上書きするために。しかし、僕たちは、これとは別の連鎖の様態も知っている。
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(例2)図像の横滑り、無節操な連鎖、またの名をモンドリアン連鎖。

コンポジション』1920

コンポジション』1935

『黄、赤、青のコンポジション』1937-42

『ブロードウェイ・ブギウギ』1942-43

ヘリット・トーマス・リートフェルト『レッド&ブルー』1918

MOMAモンドリアン・タンブラー」

イヴ・サンローラン「モンドリアン・ルック」1965

モンドリアン幾何学模様の丸えりシャツ2500円也

モンドリアン風の間仕切り本棚 埼玉県「丘の上の幼稚園」

モンドリアンをイメージしたファサード「サンクタス戸塚クロスヴィラージュ」

INAXモンドリアン・コンテナ」






PO:デザインの「モンドリアン・フラワーベース」

モンドリアン・ボックス」

イヴ・サンローラン「モンドリアン・パターンのアイシャドウ」

プチブライス・ドールのモンドリアン

ハロー・キティーモンドリアン

ポストカード「モンドリアンを鑑賞するミッフィー*1

犬の首輪のモンドリアン

モンドリアン風の?
…等々と、連鎖させてきて、最期にオチをつけるべく、

なんてものをなにげに繋げると、たちまちあの知的な、とはいえあざとくもある物語が発生しかねないことに注意すべし。モンドリアン桂離宮*2

*1:図となり地(枠)となりつぎつぎ無節操に連鎖する、モンドリアンの図像・形態連鎖を前にしては、同じく無節操に連鎖・増殖するはずのキャラたちもひどく居住まいを正しているように見える。

*2:たとえば近代の超克。西洋モダニズムのイメージ的源泉としてのジャポニズム